
海外FXのトレードをしていると「分別管理はしているが信託保全はしていない」といった言葉を目にしたり耳にしたりすることがあります。分別管理は投資の世界ではよく聞くものではあるものの、海外FX初心者の方の場合、この分別管理の意味が良くわからない人もいるのではないでしょうか?
この記事では、分別管理とは何なのか?信託保全と何が違うのか?その他分別管理に関する情報も交えながら紹介していきます。これから口座開設を考えている方は、分別管理有り無しの業者を比較検討する際の参考にしてみてください。
分別管理とは?
分別管理という資産管理方法は、トレーダーの資産を自社の運営資金とは別の口座で管理する方法を指します。分別管理は信託銀行を利用せずに自身で銀行口座を管理します。この分別管理の方法は自社で行っても良いですし、外部の複数の会社を使っても良いです。
分別管理を自社だけで行う
分別管理を自社だけで行えば、無駄な管理コストが削減できます。しかしその一方で、FX業者が顧客資金を会社の運用資金に流用することもできるので、トレーダーとしては安心できません。
分別管理を複数の会社で行う
次に分別管理を複数の会社で行い、共同口座を作って別の会社が口座資金をチェックすることができるようにする資金管理です。複数の企業が関わるため、管理コストがかかりますが、FX業者がトレーダー資金を自己資金として流用していないことを別会社が保証してくれるため安全性が高まります。
分別管理を行っている海外FX業者
分別管理を行っている海外FX業者には以下のようなところがあります。
- GEMFOREX
- XM Trading
- Tradeview
- Exness
- HFM
- TitanFX
信託保全とは?
一方の信託保全とは、トレーダーから預かった口座資金や取引損益、スワップ損益などのお客様資産を会社の資産と別にして信託銀行に信託して管理することを指します。そのため、もしFX業者が倒産した場合でも、トレーダーが預けていた口座資金などは全額返還されます。信託保全で変換される対象としては「預け入れた証拠金、スワップ損益、評価損益、実現損益など」のすべてが補償されています。
日本国内FX業者の場合には信託保全が義務付けられているものの、海外のFX業者の場合は必ずしも信託保全を行っている訳ではありません。そのため、「分別管理は行っているが信託保全は行っていない」というのが圧倒的に多いのが現状です。その理由は海外FXにおいては信託保全が義務でないという点、信託保全を行うには費用が掛かりすぎる点があると言われています(人件費や外部監査機関との契約も必要となる)。だからといって分別管理しかないFX業者がすべて危険なのか?というとそうでもなく、しっかりと管理している業者も多いです。
もちろん、分別管理の方法によっては安全性の高い管理方法はありますが、信託保全と比べると分別管理のみ行っている業者の安心度はどうしても低くなってしまうのは、デメリットと言えます。
信託保全を行っている海外FX業者
信託保全を行っている海外FX業者には以下のようなところがあります。
- Axiory
- FBS
- MyfxMrkets
- FXGT(一部信託保全という噂)
分別管理を行っているFX業者と比べると数は少なくなってしまいます。
海外FX業者の場合は金融ライセンスが重要
そこで海外FX業者の安全性で見ておきたいのは金融ライセンスです。
海外FXでは信託保全以外に顧客の資産を保証する機関が存在していますが、それが「金融規制当局」と呼ばれるものです。一般的に金融ライセンスがある業者は、各国の金融規制当局と繋がっており、顧客資産を守っています。そのため、金融ライセンスを持っているFX業者であれば、信託保全は行っていなくても分別管理を行っている業者であれば、それなりに安心できます。
もちろん、金融ライセンスを保有していない、分別管理も信託保全も行っていない、という業者であれば論外です。
金融ライセンスにはグレードがある
口座を開設しようといろいろな海外FX業者のサイトを見ているとわかるのですが、金融ライセンスはさまざまな国が発行したライセンスがあります。その中には金融ライセンスとは名ばかりで、お金を出せば取得できるレベルのライセンスも存在していますし、反対に厳しい条件を突破しなければ取得できないようなグレードの高い金融ライセンスを保有しているところもあります。
たとえば、5つの金融ライセンスは比較的グレードの高いと言われる金融ライセンスです。これらの金融ライセンスを保有している業者であれば信頼性は担保されていると言ってよいでしょう。しかし中には、日本でのサービス提供のために、あえてグレードの低い業者で日本へ参入しているところもありますので、グループ全体でどんな金融ライセンスを持っている業者なのかの調査は必要です。
金融行動監視機構(FCA)
イギリスの金融ライセンスFCA(Financial Conduct Authority:金融行動監視機構)は、世界でも非常にグレードの高い金融ライセンスとされています。キプロス証券取引委員会と並んで取得が難しいといわれるもので、この金融ライセンスを持っている海外FX業者は信頼度が非常に高い業者として安心できます。
ただしFCA金融ライセンスの取得は、
- トレーダー金融資産を分別管理していること
- 一定の資本金をクリアしていること
- サポート体制がしっかりしていること
- 外部監査機関からの監査が受けられていること
といった条件をクリアする必要があるため、かなりハードルが高いのです。
しかし、これらの条件をクリアして金融ライセンスを取得している海外FX業者も当然あります。
キプロス証券取引委員会(CySEC)
キプロスの金融ライセンスCySEC(キプロス証券取引委員会)は、EUに加盟、さらには欧州証券監督当局委員会に属しています。CySECは金融行動監視機構(FCA)と同じくかなり厳しい基準が設けられています。たとえば、CySECで金融ライセンスを取得する場合には、ICF(Investor Compensation Fund:投資家補償基金)への加入や分別管理が義務づけられています。
ニュージーランド金融市場統制局(FMA)
ニュージーランドの金融ライセンスFMA(ニュージーランド金融市場統制局)は、上記2社に比べるとグレードは少々下がりますが、審査は厳しめの金融ライセンスです。ただしニュージーランドライセンスは、FMAとFSPRという2つの金融ライセンス(一方は金融ライセンスではありませんが)があります。そのうちFSPRとは「Financial Service Providers Register」という金融商品の取引サービスを提供している業者であって、金融規制機関ではない点に注意しなければなりません。調査が弱い情報サイトだと金融ライセンスと書かれているところもありますが、金融ライセンスではないため、記載があっても効力はありません。金融ライセンスはFMAのほうのみです。
モーリシャス金融サービス委員会(FSC)
モーリシャス金融サービス委員会(FSC)ですが、FSCは2001年に設立された機関で、信頼性の高い金融ライセンスを提供しています。取得には詳細な要件や基準、健全性基準に従わなければなりません。現在のモーリシャス金融ライセンスFSCの審査基準は以前にも増して厳しく、現在金融ライセンスを保有しているFX業者は信頼できる業者と言えます。
海外FX業者で信託保全を行っている業者一覧
- Axiory
- iFOREX
- HFM
- FBS
- MyfxMarkets
ベリーズ国際金融サービス委員会(IFSC)
ベリーズの金融ライセンスIFSC(国際金融サービス委員会)はどちらかというと緩い金融ライセンスです。ベリーズ国内に拠点がない企業でも金融ライセンスを取得できることから、規制の厳しい日本向けにサービスを提供している海外FX業者にはこのベリーズライセンスを利用しているところもあります。基準として最低自己資本金が50万ドルほど必要ということが条件となっています。
実は海外FX業者の多くは信託保全よりも自社のトレード環境をより良いものにすることに重きを置いている傾向が見られます。信頼度を高める以前に多くのトレーダーが自社のプラットフォームでFXトレードを行ってくれるかが重要で、そこができない集客できないということです。
分別管理も重要だがその他の項目もしっかりチェック!
分別管理は顧客資金管理のためにはなくてはならないものですが、そこにコストを掛け過ぎてプロモーションやセキュリティに力を掛けられない業者も困りものです。分別管理、さらには信託保全も行っているとベストですが、金融ライセンス取得などにも目を向けて業者選定を行うことで資金管理に不安を残さずトレードを行うことができます。